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ゴールデンウィークになると、Sさんのことを思い出す。<
今からもう15年も前のこと。
当時、僕は某社会人山岳会に属していたが、
よくある人間関係・・ってやつで、例会も休みがち。

そこに新人(40歳を超えていたが)の女性Iさんが入ってきて、
クライミングの腕をどんどん上げていた。
波長の合うIさんとの山行を重ねるうちに、岩場で知り合ったというSさんを紹介され、
3人でクライミングに出かけるようになった。

といってもSさんはプロの岩登りガイド。
Sさんにトップでリードしてもらい、クライミングを楽しみながら、技術もアップ・・。
もちろん、ガイド料はロハ。

近場では、裏六甲の蓬莱峡、百丈岩、不動岩、少し足をのばして小豆島の岩場、新穂高の錫杖岳に出かけた。
フリクションのよく効いた百丈岩のフェース、蝋燭のようにそそり立つ岩場のピークから見た瀬戸内海・・・。
錫杖岳では、足馴らしの軽い岩場をやったあとに雨が降り出し、岩小屋に避難。
雨は夜通し降り続き、ゴーゴーと流れる谷水の音を聞きながら不安な夜を過ごした。

(写真:氷ノ山千本杉付近)

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「今度のゴールデンウィークに仲間と穂高の屏風岩をやるので行かない?」

小説「氷壁」」の舞台になった屏風岩に僕が登れる・・?
でも折角の機会だからと、それからの1ヶ月は不動岩で毎週のように練習。

ある日、練習を終えようとしているとき、急な雨で全身ずぶぬれ。
急いで帰ろう・・と尾根道を歩きながら、前の小枝を避けようと、
ちょっとかがんだ瞬間に“ビビーッ”と腰に痛みが走る。

「やばい、軽いギックリ腰やっちゃった・・」
運動したあとの身体が雨で急激に冷えたのだ。

1時間後に豊中に着くが、車から降りられない。
本格的なギックリ腰・・・。

翌日からそれまで経験したことのない激しい痛み・・。
布団から起きあがるのやトイレ、パンツや靴下をはくのも一苦労。
くしゃみをするときは、まずどこかにしがみついて身体を固定する。

整形外科に行ってもヘルニアではないという。
もぐりのような接骨医のところに行って高い料金も払った。

杖をつき、這いながらも、仕事は休まず・・・、そんな生活が約1ヶ月。
当然、そんな僕が穂高の屏風岩になんか登れるはずはない。
屏風岩へは僕以外のメンバーで・・・。

あとで聞くと、雪が多かった上に、Iさんがどうしても越せないハングがあり、そこから撤退したらしい。

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僕はそれから、仕事やマンションの管理組合などで、山に行く余裕がなくなってしまい、
IさんやSさんとの連絡も途絶えてしまった。

数年後に、何かの用事でIさんに電話をして、Sさんの話になった。
「えっ、知ってるやろ、Sさんのこと」
「何かあった・・?」
「穂高で死なはったんよ・・」
厳冬期の1月に同じ前穂高に仲間で入り、連絡が途絶え、雪が溶けてから、涸沢の小屋の中で発見されたらしい。
遭難して小屋までたどり着いたが、そこで力尽き・・・、隣の小屋には食料があったが、その小屋には何もなく・・・。
発見されたときには、むごい話だが、ネズミに食べられて・・・顔が見られなかったという。

ぶっきらぼうで、周囲の人には誤解されやすかったが、分かりやすくクライミングを教えてくれたSさん・・・。
Sさんが最期を遂げた涸沢は、今年もカラフルなテント村だろうか。

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2005.04.29 / Top↑